皆さんの会社では、毎日のように定時で帰る人をどのように評価しているでしょうか?
誰よりも効率を追求し、定時に退社できるパーフェクトヒューマンという評価ですか?
それとも「自分のことしか考えていない人」という評価?
もし、定時で帰る人が、だれにも迷惑をかけていないのに「自分のことしか考えていない人」
という評価をしている人がいるとすれば、あなたの会社が「残業麻痺」に陥っていないか
考えてみてください。
これは立教大学の中原淳教授が命名した言葉で、先生の研究によると
「残業が月60時間を超えると健康リスクは高まるのに、逆に幸福感は微増する」のだそうです。
残業時間が長くなることで「仕事がうまくいっている」「自分の思い通りに進めている」という
「自信」が高まってその状況に浸ってしまうのだそうです。
しかも中原教授は「残業麻痺」は残業の「集中」に「感染」、「遺伝」を招くと強調しています。
どういうことかというと。まず残業は「仕事のできる人」に「集中」します。
そして職場内の無言のプレッシャーや同調圧力によって残業が「感染」し増殖します。
最後に長時間労働の慣行は上司から部下に世代間で引き継がれ遺伝するということです。
その負の連鎖を断ち切るために、中原先生は、勤怠管理の厳格化といった仕組み面の強化とあわせて、
やるべきことを見極めるために「やらないこと」をジャッジするマネジメントの必要性と、
上司と部下が分け隔てなく「誰が、何を、どんな風に行うか」を明確化したうえで共有し
就業時間をはっきり意識する必要を説いています。
しかし、バブル期を知る「24時間働けますか?」世代と、平成最後のいわゆる「ゆとり」世代が
「残業麻痺」を乗り越えて同じ価値観を共有することに難しさを感じている方もいると思います。
そんな皆さんに本を1冊ご紹介しましょう。新潮文庫から出ている
「わたし定時で帰ります」という朱野帰子(あけの・かえるこ)さんの小説です。
内容は自分さえ定時に帰れれば、他の人のことなんかどうだってよいと考えていた主人公が、
部下の命を軽視する上司に24時間働かされそうになる同僚を家に帰すためたちあがるという作品です。
「24時間戦えますか?」世代の人も、「わたし定時で帰ります」の世代の人も「働くをはなんぞや?」
を考えるきっかけになると思います。
先週からテレビドラマ化もされていますものね。本を読むのはハードルが高いと感じる場合は
ドラマからというのもいいかもしれないですね。